2025年3月6日、ニュースリリースにてサツマイモ栽培試験の結果をお伝えいたしました。その中で向上が確認された抗酸化力について、そもそも農作物の抗酸化力というのはどういったものなのかをこちらで簡単に記載いたします。
私たち人間や農作物を含む多くの生物は酸素を使用し呼吸することで生きるために必要なエネルギーを得ていますが、その中で適切に反応できなかった酸素は活性酸素となります。この活性酸素は体内の他の物質と反応しやすく、有用な働きもする一方で本来起こらない方が良い反応を引き起こして体にダメージを与えてしまいます。具体的に、活性酸素によるダメージはDNAの損傷による細胞のがん化、動脈硬化、皮膚のシミなどを引き起こすとされており、健康、老化の抑制のために余分な活性酸素の除去は重要な課題となっています。
この活性酸素による害を防ぐために、生物は活性酸素を除去する酵素や、活性酸素を打ち消す物質(例えば各種ビタミン、ポリフェノールなど)を生産しています。実は活性酸素と一言で言っても実際は様々な物質の総称であり、これを除去する酵素、物質も多くの種類があります。そして、これらが持つ活性酸素を除去する働きを抗酸化力と総称しています。
抗酸化力の高さは栄養豊富で健康に良いとざっくり言い換えることもでき、抗酸化力の高い農作物を食べることで、これらの物質を取り込み、私たちの体への活性酸素の害を防ぐことができます。
今回私たちが美里町で実施した栽培においてはこの抗酸化力の向上が見られました。先述の通り抗酸化力は健康やアンチエイジングに重要な働きを示すもので、抗酸化力の高い農作物は大きな付加価値を持つことになると考えています。
また、抗酸化力が高いということは植物が様々なストレスに対抗できる、丈夫な状態であるともいうことができ、栽培中は気候のストレスや病害虫に強く、収穫後はより日持ちするようになることが期待できます。実際に収穫したサツマイモを保存する中で傷つけてしまった部分からの劣化、腐敗が遅くなる様子が観察されており、作物がより流通させやすくなる、劣化が遅くなることによるフードロス軽減など更なる付加価値も生じてくると考えています。
次回はこの抗酸化力の指標、測定について記載いたします。