乗用車から出る二酸化炭素排出削減のため、経済産業省がバイオ燃料への対応をエンジン車の全新車に求める方針だと報道がなされています。時期の目標は2030年代早期、これに伴い30年にバイオ燃料を1割、40年度に2割混合したガソリンの供給を目指し、このために支援策などを盛り込んだ行動計画を策定する方針です。
これまでより高いこのバイオ燃料混合率を実現するために、燃料の安定性や排ガスへの影響の検証なども進められていきますが、この取り組みが必要になる背景には自動車に導入するバイオ燃料の性質が石油由来のガソリンとはやや異なることがあります。現在ガソリンに混合するバイオ燃料としてはバイオエタノール、もしくはバイオエタノールとイソブテンを合成して作られるエチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(ETBE)が使用されており、前々回の記事で取り上げた通り、これらの燃料は分子に酸素を含むなどの点で石油由来の燃料と異なり、これにより燃料としての性質にも差が生じています。この性質の違いは燃料中に3%までの混合であれば車に悪影響を及ぼさないのですが、これを超え10%、20%まで混合しても問題ない車へと移行していくことが今回の方針の趣旨です。一方で海外、特にバイオエタノールの生産が盛んなアメリカ、ブラジルではすでにそれぞれ10%、20%のバイオエタノールを混合した燃料が使用されているため、この混合割合は技術的に非常に困難というものではなく、特に10%混合燃料を使用可能な車は国内でも既に流通しています。
しかし、既存の車の中には高濃度のバイオエタノールに耐えられないものもあり、そうした燃料が流通するようになった場合は注意していないと不適切な燃料を給油しエンジンが壊れるといったことが起こりかねません。また、20%となると新たな基準の策定が求められる他、バイオエタノール混合ガソリンは流通時に水分を含みやすいためその対策などいろいろな分野に課題が生じてきます。この状況に対し油脂を水素化して製造するバイオ燃料が一定の役割を果たせるのではないかと考えています。次回の記事ではその点を取り上げられればと思います。