当社は群馬県渋川市内圃場にて9月に開始したバイオ航空燃料の原料となるアブラナ科の作物「カメリナ」の栽培において、各地で深刻な被害を出した台風およびそれに伴う日照不足などの気候不順で多くの作物に被害が出る中でも面積当たり収率4.7 t/haという収率を記録しました。これはこれまでに世界で報告されている中でも極めて高いカメリナの収量(3.3 t/ha*1)を上回る収量であり、商業ベースに載せるのに十分な収量を達成することができました。一方、同条件下でMOILの堆肥を使用せずに化学肥料のみで行った栽培での収量は0.46 t/haにとどまりました。この値は良好な環境でのカメリナの収量2 t/haを大きく下回っており、今回の栽培での気候はカメリナにとっても適した状況で無かったことが分かると同時に、そのような中でも高い収量を記録したことで、MOILの堆肥の有用性がより明確になったと考えています。
航空業界では2021年以降、二酸化炭素排出を増やさないことが決められており、この目標を達成するためにバイオ航空燃料の需要は拡大していきます。また、バイオ航空燃料は二酸化炭素の排出を抑えるだけでなく、石油由来の燃料よりも硫黄分などの不純物が少なくなりやすいという点でもクリーンな燃料です。これにより煤などの量も低減し、そこから生じる飛行機雲、巻雲が減少します。巻雲による温室効果は航空分野で出された二酸化炭素による温室効果を上回っているという指摘もあり、航空分野による地球温暖化を議論するには巻雲は温室効果ガス以上に重要な要素となっています。バイオ航空燃料は二酸化炭素の観点だけでなく、大気汚染や雲の発生という点でもクリーンな燃料といえます。このため、海外では既に多くの国でバイオ航空燃料が作られていますが、それでもその量は必要とされる燃料の量の2%程度とされています。今後は生産の拡大が求められますが、それにより逆に環境破壊が起こる懸念もあり、効率、収量の向上が将来的に最も重要になります。
2021年には延期となった東京オリンピックの開催も予定されています。当社はカメリナの高収率な栽培により、東京オリンピックにバイオ航空燃料を供給することで大会をより活気づけられるよう努力して参ります。
*1:Guy, S. O., D. J. Wysocki, W. F. Schillinger, T. G. Chastain, R. S. Karow, K. Garland-Campbell, and I. C. Burke. 2014. “Camelina: Adaptation and Performance of Genotypes.” Field Crops Research 155: 224–232. doi:10.1016/j.fcr.2013.09.002.
気候、品種を分けた様々な条件下でカメリナを栽培した結果を紹介した文献。ここで記録された最高収量の3.3 t/haは他の文献と比較しても極めて高いものです。また、この文献でも春に蒔いた方が秋に蒔く場合よりも高い収率を記録しています。